第92章

大島莉理はハンドルを握り、家へ向かう道を走っていた。カーブに差しかかった瞬間、横合いからいきなり一台の車が飛び出してくる。肝が冷え、反射的にブレーキを踏み抜いた。

赤いスポーツカーから降りてきたのは――加藤柚奈だった。

大島莉理は車を降りる気もなく、窓越しに彼女を睨む。

「……頭おかしいの?」

少しでも止まるのが遅れていたら、まともにぶつかっていた。あんな見た目だけのスポーツカー、衝撃に耐えられるはずがない。下手をすれば、あっさり横転していた。

加藤柚奈は氷みたいな目で言った。

「どうして田中尚哉に付きまとうの」

「……は? 私が、田中尚哉に付きまとってる?」

「私、妊娠した...

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